元婚約者様、その子はあなたの娘ではありません!
 オルガは碧の瞳を瞬いて、アロイスをじっと見つめた。

「もしかして、あろいすはあたしのパパなの?」

「ふぇ⁉」

 ママとパパって、そういう意味⁉

「ああ、そうだよ。
 俺がきみのパパだ。
 今まで……すまなかった」

「ち、ちがむぐっ」

 オルガがアロイスから見えない位置でひらりと手を振ると、『違う』と言おうとした私の口は彼女の魔法で塞がれてしまった。

「パパ!」

「オルガ……これからはパパがずっと傍にいるよ」

 満面の笑みのオルガを、アロイスは感無量といった様子でぎゅっと抱きしめた。

 これは、離れ離れになった父と娘の感動の再会……ではない。

 だって、この二人は全く血が繋がっていないのだ。
 それに、オルガは私の娘でもない。

 そう言いたいのに私は口を開くことができず、ひとりでわたわたとすることしかできなかった。

「マリー、俺と一緒に王都に戻ろう!」

 オルガを抱き上げたアロイスは、私にすっきりとした笑顔を向けた。

「あいつには、きっちり謝罪させる。
 なにも心配はいらない」

 もう王都に未練などない私は、必死で首を横に振って拒否した。

 それに、あいつって誰のこと?

 もしかして、シルヴィのことなの?

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