元婚約者様、その子はあなたの娘ではありません!
「もちろん、オルガも一緒だ。
 オルガ、パパとママと王都に行こうな」

「おーと? それって、とても遠いところなんでしょ?」

「そうだよ。よく知っているね。
 オルガは賢いんだな。
 本当はとても遠いんだが、転移の魔法陣があるから一瞬で着くんだよ」

 だから今すぐにでも転移しよう、ということ?

 私はまたぶんぶんと首を横に振った。

「どうした? マリエットは、王都に戻りたくないのか?」

 こくこくと頷く私。
 
 無言な私に訝し気な顔をするアロイスに、オルガはしかたがないといった様子で、またひらりと手を翻して私の口をふさぐ魔法を解いた。

「突然現れたと思ったら、いったいなんなのよ!
 私は王都に戻るつもりはないわ!
 勝手に決めないでよ!」
 
「マリー、俺はずっときみを探していたんだ」

「だから、それがなんでなのよ!
 あなたはシルヴィと結婚したんじゃないの⁉」

「違う! 俺とあれが結婚なんて、あり得ない!
 誤解なんだよ! 全部説明するから、一度王都に戻ってくれ!
 頼むよ!」

「嫌よ! 私はここを離れる気はないわ!
 あなたにどう見えるか知らないけど、私はここでの生活を気に入ってるの!」

 かつてアロイスと婚約していた時、私は王都で貴族令嬢として暮らしていた。
 あの頃とは比べ物にならないくらい質素ではあるが、自分でお金を稼ぐ今の自立した生活を、私はとても気に入っているのだ。

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