元婚約者様、その子はあなたの娘ではありません!
「また、逃げたりしないよな?」

「失礼ね。
 私は逃げたんじゃないわ。
 ちゃんと正式な手続きをした上で、自分の意志で王都を去ったのよ」

「それはそうだが」

「約束はちゃんと守るわ。
 オルガも王都に行きたがってるし、あなたのおじい様にも会いたいしね」

「……やっぱり、俺もここに留まらせてくれないか。
 出発は五日後で構わないから」

「ダメよ。
 見ての通り、私たちの家はとても小さいの。
 お貴族様を泊めるなんてできないわ」

 私は薬草畑のすぐ横にある家を指さした。

 私とオルガそれぞれの個室とキッチンなどがあるだけで、アロイスを泊められるような客室なんてない。

「俺は床でも構わない。
 なんだったら、その辺で野宿してもいい」

「なに言ってるのよ、そんなことさせられないわよ。
 というか、あなた野宿なんてできるの?」

「できるに決まっているだろう。
 きみを探し始めてから、宿に泊まるより野宿するほうが多かったくらいだ」

「ええぇ……」

 なにそれ。
 なんでそこまでして私を探してたの?

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