君と青空
「やめて、花凪。もう、いい、あの人は。そう何度も言っているじゃない。」
「ナニナニ?どーしたんですかー???好きだったんじゃないんですかー????既婚者で子供いるのに?」
「先生に恋愛感情を抱く時点でキモいし、やめて。」
「“叶わない儚い恋”だってか〜????笑えるぞ、日夏笑」
スゥ、と息を吸う。
「私は“そんなこと現実で起こるわけのない夢のような恋愛小説の主人公”じゃないんだから笑」
「笑笑笑」
「そう言う花凪はえーと、風間(かざま)…?隆聖(りゅうせい)さんのことはどうなったの?あの人のこと好きすぎて一緒に電車で…」
「やかましいわいッ!!!風間なんか嫌いになった!!アイツうざい!!イキり陰キャ!!」
「嘘臭い笑、てか花凪のほうがやかましいから、他の人起こしちゃうじゃない。」
「お前バカなん?ここは田んぼと森しかないど田舎、田村(たむら)のもっと田舎の地域なんだから。聞こえてるわけない。」
田村。そこが私たちの住む地域。
ハート型のこの市のにある、田村。
北の方の武原田(むはらだ)などの地域の方が田舎で大きくてほぼ山だけど、ここの田村は1番南でどちらかと言うと田んぼ。ほぼ田んぼ。
そんな田んぼだらけの青空の森に近いこの獣道で私たちは喋っている。
まだ早朝なのに真っ青な青空に入道雲が浮かんでいる。
…いけない、いけない。
そんな花凪と楽しく会話をするな。
私が楽しい状況にあってちゃダメなんだよ。
私は“どうやって学校を休むか”だけ考えていろ。
『おいおい、“逃げは良くない”って二見先生が言ってたじゃん。』
『“逃げ”というのは下劣なこの世の負け者がやることだから。』
でも、でも、でも。
『お前はあそこにいるべきではない。お前がいるべきなのはここではない。』
『また馬鹿にされるよ。お前ひとり居なくなっても誰も悲しまない。むしろ喜ぶよ。』
『お前さぁ、今日音楽あるじゃん。また侮辱されるよ。恥かくよ。』
逃げたい。
今日を、9月1日から逃げれたら…心を楽にして……
「………花凪、やっぱ私森に残るよ…。花凪も…。」
「はぁ?死ね死ね死ね死ね死ね死ね。お前さぁ、私これ以上悪さしでかしたら父親んとこ飛ばされるって知らんの?風間のせいでさ〜。」
「…………………なら、私だけでも…。」
「無理無理。キモイ死ね。そーゆー行動がさ私にもメーワクかけるんだよ。みんな嫌なんだって9月1日は。自分だけ楽になろうとするな。ほら、帰るぞ。クロも早よ帰らせろって言ってる。」
ゴン
ゴン
花凪が私に石を投げながら言う。
クロは「早く帰りたい」と言わんばかりに強く引っ張る。
渋々私は帰宅路につく。
私は後ろを振り返る。
青空の森が淋しそうにしているように感じる。
やっぱり私はここにいるべきじゃない…。
真っ青な青空と入道雲。
きっと天国もこんな感じなんだろう。