君と青空


学校に着く。

まだ7時50分じゃないから、扉は開かない。

だから、私と花凪は南舎の東側、テニスコート付近の金木犀の木があるあたりで扉が開くのを待つ。



「ギャハハッ!!!」

「超ウケるんだが!!!!」

「キッショすぎだろ!!!」



ああ、アイツらが来た。

声がする方を見なくても私はわかる。

アイツらだって。

身体が強張る。

重いリュックサックのせいで重かった身体が余計重くなる。鉛のように重い。

花凪は顔を俯かせる。

私は嫌そうな顔をするのにも、それがアイツらを余計いい気にさせるのはわかっているから、笑顔の出来損ないを浮かべる。

マスクの中は暑い。

私の呼吸が多くなっているのがわかる。



ミーンミーンミーン

蝉がうるさい。


「まじで、今日…いやすぎ。」

「それな。音楽あるし。」

私たちはその気持ち悪い空気を変えるためではなく、こんな惨めな思いをしているのをアイツらに気付かれないように、ここを通る他の生徒に気付かれないように焦燥して、漠然とした会話をする。

「…腹痛い…。」

「そういや、…お母さんが梨買ってきたって…。」

「…今日の…チョコスナックパン美味しかった…ね。」

「…日夏、髪が変だよ…。」

「…花凪もね……。」

私は焦って汗を大量にかく。

どうゆう表情すればいいのかわからなくて余計焦る。

どうゆう会話をすればいいのか、なんで言えばいいのか、どうゆうことを話せば正解かわからなくて、内容が2人でズレてくる。

「そ、…そいや、るるちゃんはるるちゃんだから…、硝子を投げられて…イジメられてるんだよ…。」

私は焦燥感に駆られて、自分でも考えていないような言葉出る。
支離滅裂な会話だ。


吐きそうになる。


「るるちゃんは…包丁で殺されかけたんだよ…。るるちゃんに、るるちゃんが、るるちゃんのせいで…。」

汗が額を流れる。

前髪が顔に張り付いているのがわかる。

「きもいきもい、るるちゃん…。蟲が…」

花凪は私に「これ以上言うな」というかのように花凪も意味不明なことを言う。

私たちはどうにかしてその場を取り繕うとして、笑顔の出来損ないを浮かべて、勝手に手が動いてぶちぶち雑草をちぎる。



アイツらは目を合わせて、クスクスと笑いながら扉の方へ歩き出す。

「…石田(いしだ)たちさ、池沼なんじゃね笑?」

「いつもここ通るとき、いつもあんな感じでウケる笑笑」

「ショーガイシャ、ショーガイシャ笑笑笑」

「美莉李(みりい)たちに言わないと〜!!!」

「ギャハハッ!!!!」

「石田菌付いてるぜこの雑草〜!」

「おいおいやめろって石田菌うつるじゃんー!!!」

アイツらは時折こちらをチラチラ見ながら、いつのまにアイツらが拾った私たちがぶちぶちちぎった雑草を振り回しながら扉の方に走って行った。



今日はたまたま他の人がアイツらが通る時にいなくてよかった。

今日はいつも以上にあんなに焦ってしまった。

鏡を見るといつも以上に、気色悪くて不細工で不格好で“醜い”私が写っていた。

はぁ、始めからこんなんじゃ気分が上がらない。

余計に気持ちが悪くなる。

50分になった。

花凪も同じ気持ちらしく、お互い手に爪を立てて嫌な気持ちを浄化するように手を握りながら、扉の方に歩き出した。

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