30歳、年下わんこに愛されています
「そういうの、簡単に言うんだ」
口ではそう言いながらも、胸の奥がわずかにざわめいていた。
街灯の光が風に揺れて、光の横顔をぼんやり照らす。
少し赤くなった頬が、夜気のせいか、それとも――。
「いや、だいぶ勇気だしてます」
苦笑するその声に、照れと真剣さが混じっていて、思わず目をそらした。
足元のアスファルトには、二人の影が並んで伸びている。
その距離が、少しずつ近づいていくのがわかった。
「明日、大事なプレゼンがあるんだよね」
自分でも、逃げ道のように聞こえる。
「……でも、昼からですよね?」
光はいたずらっぽい目で、すぐに笑って答えた。
「……それは、そうだけど」
思わず、ため息まじりに返すと、冷たい風が頬を撫でた。酔いが、ほんの少し醒めていく。
「5分もしないで家帰れるんで、先輩なら余裕でしょ」
「全然余裕じゃないよ。いつも必死だよ」
「すいません、知ってます。いつも真面目に資料何回も読み直して、気合い入れてんの。まっすぐで、堂々としてて、かっこいいところも全部」
光の声が、低く柔らかく響く。
「じゃあ、今、めちゃくちゃカッコ悪いところ見せてるね」
「だから、もっと知りたい。遠藤さんのこと」
真っ直ぐに私を見つめる瞳と、その一言に、心臓が小さく跳ねた。
夜の静けさの中、自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。
頬に触れた風が冷たいのに、胸の奥だけが熱かった。
「…いいよ」
震える声でそう伝えるのが、精一杯だった。
もう、戻ることはできない。
そんな最後の扉を、開いてしまった気がした。
口ではそう言いながらも、胸の奥がわずかにざわめいていた。
街灯の光が風に揺れて、光の横顔をぼんやり照らす。
少し赤くなった頬が、夜気のせいか、それとも――。
「いや、だいぶ勇気だしてます」
苦笑するその声に、照れと真剣さが混じっていて、思わず目をそらした。
足元のアスファルトには、二人の影が並んで伸びている。
その距離が、少しずつ近づいていくのがわかった。
「明日、大事なプレゼンがあるんだよね」
自分でも、逃げ道のように聞こえる。
「……でも、昼からですよね?」
光はいたずらっぽい目で、すぐに笑って答えた。
「……それは、そうだけど」
思わず、ため息まじりに返すと、冷たい風が頬を撫でた。酔いが、ほんの少し醒めていく。
「5分もしないで家帰れるんで、先輩なら余裕でしょ」
「全然余裕じゃないよ。いつも必死だよ」
「すいません、知ってます。いつも真面目に資料何回も読み直して、気合い入れてんの。まっすぐで、堂々としてて、かっこいいところも全部」
光の声が、低く柔らかく響く。
「じゃあ、今、めちゃくちゃカッコ悪いところ見せてるね」
「だから、もっと知りたい。遠藤さんのこと」
真っ直ぐに私を見つめる瞳と、その一言に、心臓が小さく跳ねた。
夜の静けさの中、自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。
頬に触れた風が冷たいのに、胸の奥だけが熱かった。
「…いいよ」
震える声でそう伝えるのが、精一杯だった。
もう、戻ることはできない。
そんな最後の扉を、開いてしまった気がした。