30歳、年下わんこに愛されています
 七年間。
 どんなに忙しくても、記念日には必ず会ってくれていた。
 それだけが、彼が私をちゃんと見てくれている証のように思えていた。

 パソコンの画面を見つめながら、心はどこか遠くにあった。

 夕方が近づくにつれて、胸の鼓動が高鳴る。
 仕事が終わったら、ネイルを塗り直して、香水を少しだけつけよう。
 そんな小さな準備が、幸せの儀式みたいに感じられた。

 だけど──午後二時。
 ディスプレイの右上に、ポン、と小さな通知が現れた。

 『ごめん、今日会えない』

 たった、それだけの言葉。

 最初は意味がわからなかった。
 “今日会えない”――そんなはず、ない。
 約束していたのに。誕生日だって、知っているのに。

 胸の奥で、何かがスッと冷たくなった。

 机の上に置いた手が震える。
 隣の席の同僚が「どうかした?」と声をかけてきたけれど、笑って首を振った。

 平気なふりをすることには、もう慣れていた。

 それでも、パソコンの文字が滲んで見えた。

 手帳の隅に書いてあった「19:00 彼とディナー」の文字を、そっと指でなぞる。
 その指先が、ひどく冷たかった。
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