社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
日曜の午後、私たちは郊外のショッピングモールに来ている。家族連れの笑い声とポップなBGMが混ざりあい少し気分が高揚する。ここまでくればなかなか職場の人に合わないし、人も多いのでそうそう知り合いには会わないだろうと私たちのお気に入りスポット。

「今日も混んでるね」

「あぁ、いい感じに混んでてデート日和だな」

ふふっ……。
その言葉に思わず笑みがこぼれる。

「それ、いう?」

「ま、俺たちには混んでるっていうのは最強だから」

確かにここまで混んでいたら他人を気にする人なんていない。本当は手を繋ぎたいところだけど、それでも万が一を考えて私たちは横に並ぶだけ。でもここでなら“浅賀くん“ではなくて“亮くん“って呼べる。それだけでもなんだか嬉しくなる。

ふたりで家電量販店に入るとスマートウォッチのコーナーを覗く。色とりどり、素材も様々なものがあり、思わず手にとる。

「このベルトかわいい! ピンクベージュがかわいい」

「あぁ。小春の肌の色に合うな。お前の時計にも合うしいいんじゃないか?」

買おうか悩んでいると隣に色違いで並んでいるグレージュのものが目に入る。

「亮くんもこのグレージュ買わない? お揃いっぽいよ」

「ダメだろ……」

慎重な彼は首を縦に振らない。でも興味はあるのか、じっと眺めている。

「そうかなぁ。このくらいなら普通に買わない? みんなだっていろんなベルトつけてるから、よほど派手じゃなきゃ人のなんて気にしないんじゃない?」


あとひと押しかも、と思い私は粘る。たまには、一緒のものを持ちたい。結婚指輪もはめれず、結婚していること自体言えない私たちの関係。たまにはお揃いのものを持ってみたい。

「……じゃ、それにするか」

「え、いいの?」

半分は諦めていたはずの彼からのOKの返事だったから少しだけ驚いた。

「たまたまだよ」

「うん。たまたま似てたね」

ふふふっ
万歳したくなるくらい嬉しい。思わず抱きつきそうになってしまうが家まで我慢。
彼がふたつとも持って会計をしてきてくれる。
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