社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
「ごめん……」

「小春が悪いわけじゃないんだ。でも俺たちいつまでこんな関係なんだろうって、ふと思ってさ」

亮くんはふっと笑うが、その顔はどこか少し拗ねたような、悲しいような表情に見えた。彼がてを伸ばし、私の手首をそっと取った。
グレージュとピンクベージュ。
重なったベルトの間でスマートウォッチがかすかに光る。

「次はさ、“偶然“じゃなくてお揃いにしよう。堂々と同じ色で」

「え、ダメだよ」

「バレたってもういいだろ。俺はそう思っている」

その言葉に胸の奥がじんわり熱くなる。お揃いであることを否定しないといけない今の微妙な関係に彼は少し苛立っていた。そんな彼の小さな嫉妬が少しだけ嬉しい。私を思ってくれていると感じさせてくれる彼の言葉が胸の奥に染み込むように入ってきた。

「亮くん、ご飯作ったよ。一緒に食べよ」

私がそういうと彼はやっと表情を緩めた。

「ありがとう。今日の開発部、修羅場のような忙しさでヘトヘトだよ」

そう言うとやっと彼は靴を脱いだ。リビングに入ってくると「いい匂いだな」と言って料理を摘もうとする。

「ダメ、手を洗って着替えてきて」

「はいはい、わかりました」

そういうと彼は素直に洗面所に向かった。私は料理を温め直しながら声をかける。

「最近の開発部ってなんだか忙しすぎない?」

「そうだな。なんだかやることが多くてさ。でもこのご飯で疲れが吹き飛ぶよ」

そう言われるとなんだか照れる。ようやく食卓につくと亮くんはゆっくり箸を取った。
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