社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
午後、コピー室でばったり亮くんと会った。偶然とはいえ、私はにっこり微笑んだ。

「浅賀くん」

「渡辺さん」

“渡辺さん”と“浅賀くん”の仮面をかぶったまま、人のいない空間でこっそり目が合う。

「お弁当、ありがとな」

「ううん、美味しかった?」

自分でも食べたから問題ないのはわかっているけれど、それでも感想が聞きたいのは乙女心。

「美味しかったけど。ハートはやめようか」

「えっ? あれ、かわいくない?」

「かわいいけど……他の人に見られたらバレる」

どう見ても男子が作った弁当には見えないだろうと思っていたが、少しだけ彼を困らせたい気持ちもあった。どんな顔をして食べるのか想像をすると楽しくなってしまった。

「え、亮くんがハート好きって前に……」

「覚えててくれたのは嬉しいけど、職場でそれは危険なんだよ」

(うわ……)
ちょっと頬が赤くなってる。本気で照れてる顔、かわいい。

「じゃあ、明日は星型にするね」

「……それもダメ」

「じゃあ何型ならいいの?」

「……四角で、普通の、無難なやつ」

「つまんない〜!」

声を殺して笑う私。そんな私を見て、亮の肩の力が少しだけ抜ける。

「……ほんと、気が抜けるな。小春と話してると」

「会社では“渡辺さん”ですよ?」

「はいはい、“渡辺さん”」

その目尻が、ほんの少しだけ下がっている。そんな亮の顔を見るのが好き。
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