社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
***
小春の寝息が静かに聞こえる。
寝室で俺は父から届いたメールを再度見た。
【明日の朝、社長室に来なさい】
小さくため息が漏れる。「とうとう来たか」そう胸の奥でつぶやいた瞬間、何年分もの感情が一気に浮かび上がってくる。
“浅賀亮“として過ごした普通の社員としての3年。同期と同じように仕事をして、失敗して、怒られて、笑って、それなりに充実した日々だった。大学卒業してすぐに結婚した小春との関係を隠しているのは辛く、小春に対しても罪悪感があったが、それでも俺たちなりに上手くいっていた。彼女は稲木亮としての自分を知ってくれている。それに浅賀亮としての自分も正面から見てくれている唯一の存在。いつも隣で笑顔でいてくれ、俺はどれだけ彼女に支えられているかわからない。俺が守らなければと思うのに、どこか彼女に救われている自分がいた。
期間限定の偽名の世界。
ここに小春を巻き込んだのは俺たち家族だ。でも今それがゆっくりと崩れ始めている。
小春は自分のせいで秘密が破られてしまったのかもと気に病んでいることはわかっている。そもそもの原因は俺がメガネを忘れていったことなのに、それさえも彼女は気に病んでしまっている。
こんな些細な出来事でさえ彼女を悩ませてしまう今の自分に正直辟易している。俺は彼女の笑顔を守りたいのに。
ふと机の上の写真たてに目をやると休日に撮った小さな記念日写真。その中の小春が無邪気に笑っていた。
この笑顔も日常も、守ってやりたい。俺は寝ている小春の頭をそっと撫でた。
明日どんな言葉を父に言われても大丈夫だ。
“浅賀“でも“稲木“でもどちらも彼女の隣にいるための俺だ。
小春が、どんな名前でもいいって言ってくれたから、俺はどんな世界でも立てる気がする。
頭を撫でても起きない様子の小春を見て、つい額にキスをした。
小春、愛してる……。
何度口にしても足りない言葉を今も心の中で彼女に捧げた。
小春の寝息が静かに聞こえる。
寝室で俺は父から届いたメールを再度見た。
【明日の朝、社長室に来なさい】
小さくため息が漏れる。「とうとう来たか」そう胸の奥でつぶやいた瞬間、何年分もの感情が一気に浮かび上がってくる。
“浅賀亮“として過ごした普通の社員としての3年。同期と同じように仕事をして、失敗して、怒られて、笑って、それなりに充実した日々だった。大学卒業してすぐに結婚した小春との関係を隠しているのは辛く、小春に対しても罪悪感があったが、それでも俺たちなりに上手くいっていた。彼女は稲木亮としての自分を知ってくれている。それに浅賀亮としての自分も正面から見てくれている唯一の存在。いつも隣で笑顔でいてくれ、俺はどれだけ彼女に支えられているかわからない。俺が守らなければと思うのに、どこか彼女に救われている自分がいた。
期間限定の偽名の世界。
ここに小春を巻き込んだのは俺たち家族だ。でも今それがゆっくりと崩れ始めている。
小春は自分のせいで秘密が破られてしまったのかもと気に病んでいることはわかっている。そもそもの原因は俺がメガネを忘れていったことなのに、それさえも彼女は気に病んでしまっている。
こんな些細な出来事でさえ彼女を悩ませてしまう今の自分に正直辟易している。俺は彼女の笑顔を守りたいのに。
ふと机の上の写真たてに目をやると休日に撮った小さな記念日写真。その中の小春が無邪気に笑っていた。
この笑顔も日常も、守ってやりたい。俺は寝ている小春の頭をそっと撫でた。
明日どんな言葉を父に言われても大丈夫だ。
“浅賀“でも“稲木“でもどちらも彼女の隣にいるための俺だ。
小春が、どんな名前でもいいって言ってくれたから、俺はどんな世界でも立てる気がする。
頭を撫でても起きない様子の小春を見て、つい額にキスをした。
小春、愛してる……。
何度口にしても足りない言葉を今も心の中で彼女に捧げた。