社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
会場に流れる照明が、壇上のスクリーンを淡く照らしていた。ざわめきが小さく広がり、やがて司会の声で静まり返る。
「それでは、次の発表は開発部・浅賀亮による、新規プロジェクト報告です」
拍手の音が遠く聞こえる。スーツのボタンを留め、一歩壇上へ上がった。マイクを持つ手が、緊張からかわずかに汗ばんでいる。
視線を上げると、会場の最前列に父の姿がみえる。
そして会場の後方には小春の姿も目にすることができた。
大丈夫。胸の奥でそうつぶやく。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。私は開発部の浅賀亮です」
自分の声が、驚くほど落ち着いて響く。三年前なら、緊張で言葉が詰まっていたかもしれない。
けれど今は、伝えたいものがある。守りたい人がいる。
プロジェクトの内容を語りながら会場を見渡すと、目が合った社員たちがあの日のトラブルの記憶を思い出したように、力強く頷きながら真剣な眼差しを向けていた。
“地味だと言われたっていい。俺のやり方で、ちゃんと証明する。”
説明が終わり、拍手が起こった。だが今日の発表は、まだ終わらない。
「最後に、ひとつだけお伝えしたいことがあります」
会場がざわつく。俺のマイクを持つ手に先ほどよりも力が入る。
「私は、浅賀亮として三年間働いてきました。ですが、本名は稲木亮と言います。この会社の社長・稲木誠の息子です」
一瞬で静まり返る空気。その後ざわめきが波のように押し寄せる。
「この三年間、浅賀という名前で働いたのは、“現場を知るための修行”としてでした。一般の新入社員と同じところから始まり、多くのことを学びました。未熟な部分も多く、迷惑をかけたこともたくさんあったと思います。ですが、この時間の中で社長の息子としてでは知り得なかったであろうたくさんのことを学びました」
社員の視線を一心に集め、緊張が張り詰める中、遠く視線の先に見えた小春が小さく息を呑むのがわかる。
「皆さんに隠していたこと、本当に申し訳ありませんでした。でもおかげで皆さんの努力があって会社が成り立っているのだと改めて感じさせられました。ありがとうございます。これからは“稲木亮”として、今までと変わることなく皆さんと同じ目線で働いていきます。どうぞ、よろしくお願いします」
深々と頭を下げると会場の沈黙が数秒続き、次の瞬間、拍手が鳴り響いた。
前列に見える父の横顔がわずかにほころんでいるように見えた。その表情を見た瞬間、胸の奥に何かが溶けていくようだった。
“これでようやく、堂々と隣に立てる”
——そして、彼の視線はまっすぐ小春に向けられた。
小春は静かに頷き、目を潤ませながら微笑んでいた。
「それでは、次の発表は開発部・浅賀亮による、新規プロジェクト報告です」
拍手の音が遠く聞こえる。スーツのボタンを留め、一歩壇上へ上がった。マイクを持つ手が、緊張からかわずかに汗ばんでいる。
視線を上げると、会場の最前列に父の姿がみえる。
そして会場の後方には小春の姿も目にすることができた。
大丈夫。胸の奥でそうつぶやく。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。私は開発部の浅賀亮です」
自分の声が、驚くほど落ち着いて響く。三年前なら、緊張で言葉が詰まっていたかもしれない。
けれど今は、伝えたいものがある。守りたい人がいる。
プロジェクトの内容を語りながら会場を見渡すと、目が合った社員たちがあの日のトラブルの記憶を思い出したように、力強く頷きながら真剣な眼差しを向けていた。
“地味だと言われたっていい。俺のやり方で、ちゃんと証明する。”
説明が終わり、拍手が起こった。だが今日の発表は、まだ終わらない。
「最後に、ひとつだけお伝えしたいことがあります」
会場がざわつく。俺のマイクを持つ手に先ほどよりも力が入る。
「私は、浅賀亮として三年間働いてきました。ですが、本名は稲木亮と言います。この会社の社長・稲木誠の息子です」
一瞬で静まり返る空気。その後ざわめきが波のように押し寄せる。
「この三年間、浅賀という名前で働いたのは、“現場を知るための修行”としてでした。一般の新入社員と同じところから始まり、多くのことを学びました。未熟な部分も多く、迷惑をかけたこともたくさんあったと思います。ですが、この時間の中で社長の息子としてでは知り得なかったであろうたくさんのことを学びました」
社員の視線を一心に集め、緊張が張り詰める中、遠く視線の先に見えた小春が小さく息を呑むのがわかる。
「皆さんに隠していたこと、本当に申し訳ありませんでした。でもおかげで皆さんの努力があって会社が成り立っているのだと改めて感じさせられました。ありがとうございます。これからは“稲木亮”として、今までと変わることなく皆さんと同じ目線で働いていきます。どうぞ、よろしくお願いします」
深々と頭を下げると会場の沈黙が数秒続き、次の瞬間、拍手が鳴り響いた。
前列に見える父の横顔がわずかにほころんでいるように見えた。その表情を見た瞬間、胸の奥に何かが溶けていくようだった。
“これでようやく、堂々と隣に立てる”
——そして、彼の視線はまっすぐ小春に向けられた。
小春は静かに頷き、目を潤ませながら微笑んでいた。