敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
 運よく、すぐ来たエレベーターに乗り込み、ドアを閉める。
 そして、千尋は密室になったエレベーターの中で、美絃を抱きしめた。

「ぶっ……ちょぅ?」
「俺じゃダメか?」
「ふぇっ……?」
「あいつと別れたばかりだから、まだ心の傷が癒えてないと思って……」
「……」
「だから、もう少し我慢しようと思ってたんだが、もう……我慢の限界のようだ」

 千尋の腕の中にすっぽりと収まるほどの華奢な体。
 千尋の突然の行動に動揺しているのか、美絃の黒目がちな瞳が泳ぐ。

「あいつじゃなくて、……恋愛がしたいなら、俺にしろ。仕事以外なら全力で甘やかしてやるから」
「なっ……(なんてことを言うんですか!)」

(何なにナニ……。何で私なんかにそんな蕩けそうな眼差しを向けてくるの? どこにでもいる冴えないOLなのに……)

「ぶ、……部長」
「千尋だ。そろそろ名前くらい呼んでくれてもいいだろ。あいつは名前で呼んでたのに……」
「なっ、何ですか、急に!」

 突然のデレ発言に、美絃は思わず声を荒げてしまった。
 けれど、Yシャツ越しに聞こえてくる彼の心臓の音が、思った以上に速くて。
 伝染するかのように、美絃の胸もトクトクと反応する。

「俺はお前と恋愛がしたい」
「ッ?!」
「冗談じゃないぞ? 俺は本気だ」
「……」
「言っただろ。……お前の両親と食事した時に、俺の一目惚れだって」
「へ? …………ぇええっ?!」
「最初にした挨拶以外は、俺は何一つ嘘は吐いてないぞ」
「…………(嘘っ)!!」

 ピンポンとチャイムが鳴り、エレベーターが停止した。

「誰かに見られちゃいますっ」
「俺は構わない」
「私は困るんですっ!」

 スーッとドアが開いてしまって、思わず腕を伸ばして【閉】ボタンを連打した。

「今、誰かがいたような……」
「気のせいだろ」
「もう本当に、離して下さいっ」
「名前を呼んでくれたら解放してやる」
「なっ……」
「ん?」

 早く言わないと誰かに見られるぞ? とでも言いたげな表情で煽って来る。
 美絃は仕方なく、顔を持ち上げて千尋を真っすぐと見据えた。

「……会社ではダメです」
「じゃあ、会社以外ならいいんだな?」
「…………はぃ」
「フッ、言質取ったからな?」

(あぁ~~、なんで『はい』って言っちゃったのよ~~)
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