敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
 数日後の朝七時半。

「千尋さん、行って来ます」
「美絃」
「……んっ」

 お互いに想いを確認したあの日から、美絃と千尋は本物の恋人になった。
 美絃は電車通勤のため、一足先に出勤する。
 そんな美絃を呼び止め、ハグとキスをするのが千尋の日課になった。

「気をつけて」
「……はい」

 赤らんだ頬を手団扇で扇ぎながら、美絃はマンションを後にした。

**

 会社に出勤すると、あちこちから視線を向けられ、美絃は何事かと首を傾げる。

「美絃っ!!」

 美絃の姿を見つけた同期の洋子が、物凄い勢いで駆け寄って来た。

「ちょっとこっち来て!」
「えっ、何かあったの?」
「何かあったの? じゃないわよ!!」

 一階の来客用のトイレに駆け込んだ美絃と洋子。
 洋子は自身のスマホの画面を美絃に見せる。

「これ、本当なの? 美絃、郡司部長と付き合ってるの?」
「……ッ?!」

(何これ!! 顔にモザイクがかかってるけど、業務部のTさんって、私じゃない!)

 少し前に千尋さんと買い物に行った時の様子が写真に撮られていて、社員用の掲示板に書き込まれていた。
 通常は業務連絡や宣伝などをするためのものなのに、何故? 誰が? こんなことをしたのだろうか?

 買い物袋を手にして、マンションに入っていく姿を撮られたため、完全に交際していることがバレてしまった。
 変に誤魔化すと後々厄介になると思い、美絃は洋子にだけ事実を伝えた。
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