アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
「万理……何処にいるの?」

 どれだけど探しても見つからない万理。最早この世界には居ないのではないかと思う程に、彼女の行方が分からない。
 酷い扱いを受けて来たとは言え、万理はルゥアンダ帝国の皇女だ。自国ではない土地で一人、上手くやって行けるとは到底思えない。

「無事ならそれでいい…? そんな訳があるか……万理が居ない世界なんて、どうでもいい」

 仮死状態でも首輪飾りは外せる。確信はなかったが鈴蘭で証明する事が出来た。殺す必要はなかった。
 冷たくなりかけた体。あの時、息をしていない様に見えた瞬間。それでも───首輪飾りは外れた。生体反応さえ消えれば仮死でもいい。条件を満たせばあれは外せる。
 知ってしまった以上、選択肢は一つしかない。
 必要なら、また同じ事をすればいい。
 今まで通り大人しく〝側近のハリ〟として、このまま二人を見張るのだ。
 
 自分を守る為、という言葉は使わない。
 それはあまりにも綺麗すぎる。

「封印は解かせない……万理も捜し出す。必ず」

 目的の為なら鈴蘭もラインアーサも───。


 視線の先で、何時も変わらず、柔らかく、無防備な程に真っ直ぐだったラインアーサ。
 同じ場所に生まれていたら、違っていたのだろうか。そう考える自分に、ハリは小さく自嘲した。
 彼は与えられて育った。愛も、信頼も、居場所も。他人に手を差し伸べる事を、当たり前の様に覚えた人間だ。それが疎ましい。眩しすぎて目を逸らしたくなる。───けれど。
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