この恋を実らせるために

営業をしている中で知り合った方の中には女将さんのように接してくれる人もいる。仕事以外の部分でも繋がりが持てて嬉しく思う。

安心してもらいたいと心からの笑顔を見せると、少しほっとしたような様子を見せてくれた。

「そう? ただでさえ細いんだから、ご飯はしっかり食べるのよ。ほら、これね、新しいメニューなの。味見していって」

小鉢には、コロンと丸い揚げ物のような物がのっている。

「女将さん、これいただいてもいいんですか?」

「もちろんよ。食べて、感想聞かせてくれる?」

「では、お言葉に甘えていただきます」

お箸でそれを割ると中にひき肉餡が出てきて驚く。一口口に入れるとまわりはカリッとして中はホクッとした里芋に出汁の効いた鶏肉のそぼろ餡がとろっとしていて、食感も楽しめとても美味しい。

「……美味しい。女将さん、これすごく美味しいです」

「でしょう。昔、どこかでこんな感じのを食べたな、って思い出して。それで作ってみたのよ。ねぇ、新メニューになるかしら?」

「なります! 他のお客様も感激しますよ。美味しくて絶対にリピしたくなります」

「そう。よかったわ」

「ぜひ、うちの方で納めている日本酒に合わせて食べてもらいたいですね」

私がニコリと微笑めば、女将さんも笑顔を返してくれた。

「そうね、きっと合うわ。お客様に勧めてみるわね」

「はい、ぜひお願いします!」

お店が開店する少し前まで女将さんと仕事の話を含めたくさんの話をしながら、おすすめメニューを何品かいただいてお店を出た。
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