この恋を実らせるために

会議室に入ると錚々たる顔ぶれが集まっていたので、ぐっと手を握り周りを見回す。

プロジェクトチームのメンバーは社内でもよく名前を聞くほど仕事のできる人たちばかりなのに、営業部のエースと言われている橘さんは実に堂々としていて尊敬する。

果たしてこんなすごい人たちの中で私がどこまでできるのだろうか。そんな不安な気持ちを隠して挨拶をする。

「おはようございます。今日からこのプロジェクトチームに参加することになりました営業部の堀田です」

頭を下げていると、横に立つ橘さんが続ける。

「営業部の精鋭だ。彼女は今日から参加となるので、進捗など聞かれたことはきちんと説明してあげてほしい。みんな、よろしく頼む」

精鋭なんて言われて緊張もマックスな私は全身から変な汗を掻く。しかし、橘さんの真剣な表情とメンバーからの期待のこもった視線を感じ、改めて頑張ろうと気合を入れた。

とりあえず席に着いたところで、隣に座っていた男性が声をかけてきた。

「新メンバーって、堀田さんだったんだね」

「あ、三枝さん。三枝さんもメンバーだったんですね」

声の方に顔を向けるといつの間にか隣に座っていたのは橘さんの同期の三枝さんだった。

「うん。本来なら経営戦略部と営業部だけでやってそうだけど、今回はかなりの受注を見込んでいることもあって多方面から戦略を練ろうとなってね。俺も声をかけてもらえたんだ」

にこやかに語る三枝さんは私とは数回仕事で関わったことがあるというだけなのに、いつもフレンドリーに話してくれる素敵な先輩だ。

「そうなんですね。それにしてもすごいメンバーですね。追加メンバーが私だなんて気後れします」

「堀田さんのいつもの仕事ぶりなら大丈夫だよ。どんなことでもいいから気になることがあれば聞いてくれて構わないからね」

「ありがとうございます。三枝さんがいてくださって、とても心強いです」

お世辞でもなく素直に出た言葉だった。橘さんと三枝さん、他にも優秀な人たちがたくさんいる中で仕事ができることを嬉しく思う。

それからというもの通常業務の他、プロジェクトチームの業務もあり、忙しい日々になった。
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