この恋を実らせるために

本当に彼女は恋人と別れたのだろうか。
あの朝泣いていたのは彼と別れたからなのか?

彼女がすごく早くに出勤してきたあの朝、周りに人影はなく俺は彼女に声をかけるチャンスだと思った。

どんな会話をしたらいいだろうと考えた俺は『おはよう。今朝は早いね』と心の中で数回練習した。

堀田さんを驚かせないようにしようとさりげなく彼女の斜め後ろから近づいていこうと足を進める。

しかし、近づいていくと見えてきた彼女は前に置かれたカップを口に運ぶ様子がなく、どうしたのだろうと少し離れた位置から様子を窺っていると顔にタオルをあてていた。

『ううっ……』という声が聞こえ、泣いているのかと思ったら声をかけられなかった。

もし本当に彼女が辛くて泣いているなら傍に行って慰めてあげたい。そう思ったものの、たいして親しくもない俺が近づいて行ったところで不審がられるだけだろう。

いくつかの考えを巡らせた結果、俺はグッと拳を握りしめその場から立ち去った。

彼女が本当に彼氏と別れたなら、亮平の言う通りこのプロジェクトで俺という存在を知春にしっかりと刻みつけたい。もう二度と後悔なんてしないように前に進んでいこうと決意した。
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