この恋を実らせるために

「ほら、行くぞ。付いてこい」

「あ、待ってください。さすがに橘さんと業務外で一緒にいるとか、誰かに見られでもしたら私困るんですけど」

「別に二人きりで飯を食おうって言ってるわけじゃないからな。店に待ってる奴らがいるから気にするな」

「え? 待ってる人って誰ですか? あまり知らない人と一緒に食事する気分でもないんですけど……」

「お前も知ってる奴らだから安心しろよ」

なかなか歩き出さない私に業を煮やしたのか橘さんは私のバッグを持って先に歩きだした。

仕方なく後をついていくと着いたところは会社から駅を超えたところにあるラグジュアリーなホテルだった。

普段入ることのない場所に気後れして足を止めると平然と進んでいた橘さんが振り返った。

「ここの上にあるフレンチが美味いんだ。他の奴らはもう来ているみたいだからさっさとついてこい」

「で、でも……」

いや、こんなに会社の近くで食事してたら絶対に誰かに目撃されるでしょう……。変な誤解をされるのは困るのに、と足を止めていると橘さんはなんてことないように語った。

「食事するだけだ。それとたまには頑張ってる後輩を労ってやろうということだ。ついてこい」

そう言って私のバッグをわざと見せつけた橘さんは、さっさとエントランスを通って行ったので私は慌てて後を追った。

エレベーターで最上階に着き通路奥にあるフレンチレストランの入り口で橘さんが名前を言うと、対応していたスタッフが奥の個室へと案内してくれた。

その個室で待っていた人の顔を見て私は驚いた。

「さ、三枝さん!? と、吉瀬さん?」

「あら、あなたも来たの?」

「やあ、堀田さん。遅くまでお疲れさまでした」

「……あ、あの、こんばんは」

恐れ多い人たちの集まりだとわかり、緊張はマックスになる。
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