この恋を実らせるために
なんと驚いたことに私の同期で秘書課に勤務している吉瀬さんがいた。彼女はわが社の社長令嬢で高嶺の花と噂の才色兼備の女性だ。
そして、ここにはわが社のキングと王子と呼ばれる二人がいる。
キングとは橘さんのこと。彼は入社1年目にして営業成績トップになるという優秀さを見せつけ、その自信あふれる態度から貫禄さえ感じさせる。加えて眉目秀麗であるため、女子の人気を集めている。
王子は三枝さんで橘さんに負けず劣らずの優秀さと明るめの茶色い髪に光の加減で緑にも見える瞳を持つ美男子。さらに爽やかな笑顔で微笑めばたいていの女子は心を奪われてしまう。橘さんと三枝さんは女子人気のツートップだ。
このレストランとこのメンバー、とっても場違いな私は席にも着けずその場で固まる。
「堀田、なにしてるんだ。さっさと座れ」
「亮平は相変わらずだね。堀田さん、こちらにどうぞ」
すっと立ち上がった三枝さんは私に近づいてくると立ち尽くしていた私の腰に腕を回して歩きだし、吉瀬さんの横の椅子をすっと引いてくれた。
「今日はこちらの席でいいかな?」
「あ、ありがとうございます」
エスコートされた経験のない私は慣れない動きに戸惑いを隠せず、緊張に肩があがってしまう。
「堀田さん、落ち着いて。ほら、肩の力を抜いてごらん」三枝さんの手が私の両肩に置かれその温もりに「はい」とひと息ついた。
「それで、亮くんが遅れてきた理由は堀田さんが原因なの?」
「いや、ちょっと社長に呼ばれてな。それで遅くなった」
「パパが? いったい亮くんを呼んで何を言ったのかしら?」
「仕事の話だよ。で、話が終わって自席に戻ったらこいつがまだ仕事してたんだよ」
「ふうん。今日は定時退勤日なのにこんな時間まで仕事してたの? 早く帰らないから亮くんにこんなところまで連れてこられちゃうのよ」
あきれ顔でため息をつく吉瀬さんは女王様のようだ。どんな姿でも凛としてすごく絵になる。
「はい、すみません」
「琴美ちゃん、まあ、いいじゃないか。堀田さんもせっかく肩の力抜いてあげたのにまた肩があがってるよ」
「まったく。達也くんは女性に甘いんだから」