この恋を実らせるために
タクシーが彼女のマンションの前で停車した。俺はタクシーをその場で待たせて、彼女と一緒に一度外へ出た。
「堀田さん、お疲れさまでした。週末はゆっくり休んでね」
「あの、今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、今日はありがとう。俺も楽しくて、本当はもっと話していたかったよ」
「私もこんなに楽しかったのは久しぶりでした」
「楽しかったって思ってくれたなら、また食事に行こう。連絡先を聞いてもいいかな?」
警戒されるのではと思う不安な気持ちを隠してスマホをポケットから出して訊く。
知春が「はい」とスマホをバッグから出してくれてホッとする。
ドキドキと胸が鳴り手が震えそうになったが深呼吸をして「じゃあ、これ読み取ってくれる?」と連絡先を交換した。
「じゃあ、また4人で食事にでも行こう。連絡するよ」
「はい、ありがとうございます。楽しみにしてます。それじゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい。堀田さんがマンションに入るまでここで見てるから行って」
「ありがとうございます。じゃあ、本当におやすみなさい」
知春はペコリと頭を下げた後、マンションの中に入っていった。
「おやすみ」と言った時、知春を抱きしめたい衝動に駆られたのをなんとか抑えた自分を褒めた。
このまま知春と一緒にいたい、もっと一緒にいたい。
彼氏と別れてあまり時間が経っていないとのことで、今は仕事を頑張りたいと話していた知春の心に少しでも俺の存在が刻まれるよう祈った。
俺の気持ちをあの日の出来事を知春に打ち明けるにはまだ早い。今は彼女が頑張ろうとしている仕事を応援していこう。そして、今度こそタイミングを逃さないようにしないとな。
帰り道、窓の外に見える月を眺め、あとどれくらい会話を重ねたら知春に俺の思いが届くのだろうか。そんな日が早く来ることを願った。