この恋を実らせるために
胸の前で両手を握り、私の気合いを見せてみたら林さんがなぜだか絡んでくる。
「おー、堀田さんがなんだかすごく頼もしく見えますね。いいんじゃないですか」
「林さん。それって私が頼りないってことですよね?」
もう、仕事のできる後輩は偉そうなんだからと私がちょっとむくれていると、林さんはさらに楽しそうにしている。
「いや、もともと頼りにしてましたけど、ちょっと印象が変わりました。僕も、もっと頑張ってみるかな」
「そうよ。いくら仕事ができるからってのんびりしてないでね。林さんには今まで以上に頑張ってもらわないと。ねえ、橘さん」
橘さんは私から同意を求められると、腕を回しながら林さんに向き直る。
「よし、林の気合いをいれるために、今晩飲みにでもいくか?」
「いいですね! 堀田さんも行きますよね」
「え!? 私も?」
「いいじゃないですか。行きましょう!」
林さんに強引に決められ逃げられない雰囲気になってしまった私はなんとなく返事してしまった。
「ぁ、まぁ、はい」
「じゃあ、早く残りの仕事を終わらせましょう」
浮かれた様子の林さんに気がついた三枝さんは、話していた広報担当者から離れ林さんの肩を掴む。
「飲みに行くの? だったら俺も一緒に行こうかな」
三枝さんが私に向かってニコリと微笑んだ。
「いいですよ。じゃあ、橘先輩と三枝先輩のおごりってことで、よろしくお願いします」
三枝さんに肩を掴まれたままの林さんは明るい調子でおねだりしていて強者だ。
「お前、ほんと調子いいよな。まぁ、頑張る後輩に美味いもん食わせてやるか」
橘さんが林さんの要望に応えると林さんは喜んでいた。
三枝さんも「仕方ないな」と言って林さんの肩から手を離す。
「堀田さんも行くんでしょう。ご馳走してあげるね」