この恋を実らせるために
笑顔で私の横に並んできた三枝さんは「今日も俺が送ってあげるから、好きなだけ飲んでいいよ」と前にいる2人には聞こえないくらい小さな声で囁き、ドキッとするような笑顔で微笑まれた。
こんな素敵な人に優しくされたら、きっとどんな子でも勘違いしちゃうわよね。
4人でワイワイとしているとそこに1人の女性が近づいてきた。
「林くん。ねぇ、今日飲みに行くって聞こえたんだけど、私も行ってもいい?」
聞けば、彼女は木藤良美さんと言って林さんの同期なんだとか。
無邪気な顔をして会話に参加してきた彼女は橘さんと三枝さんにも「私も行きたいです!」とねだっていた。
「私、せっかく同じプロジェクトメンバーになれたので、三枝さんとお食事に行けたらな〜って思っていたんです」
木藤さんは三枝さんにしなだれかかるようにしていた。
ん? なんだか胸のあたりがモヤモヤする。
その時はいつもとは違う何かに気がつかないふりをして自席に戻って行った。
会議室から一緒に席に戻った林さんは「今晩、楽しみですね」と楽しそうに仕事をしていた。
林さんは終業時間を過ぎると仕事中の橘さんの席に向かい「早く行きましょう」と浮かれていた。
私たちは帰り支度を済ませて、エントランスに向かう。待ち合わせの場所には三枝さんと木藤さんがすでにいて、なんだかとても親しげに話している。
「2人とも早いな」と先頭を歩いていた橘さんが声をかけると、三枝さんの腕に手をかけていた木藤さんが振り返った。