この恋を実らせるために
林さんが何かと気を遣って話しかけてくれるものだから、前に座る2人の会話に聞き耳をたてている余裕はない。
そのまま橘さんや林さんと楽しくおしゃべりしながら、目の前に並んだお料理を美味しく頂いていた。
「本当に堀田さんっておいしそうに食べますね」
「え? やだ、私がっついてた?」
「そんなことないです」
「よかった。ここのお料理が本当においしくて、つい箸が進むって感じなのよね。でも、ガツガツ食べるなんてかわいげないよね」
ケラケラと笑っていた私に林さんが真面目な顔で語る。
「いや、堀田さんは何しててもかわいいです」
林さんの言葉にこれから食べようとしていた煮物を掴みそこねる。
「も、もう林さんったら、酔ってる?」
「この程度の量では酔いません」
「林さんもお酒強いんだね」
「僕もって、誰と比較されたのかな? 他の男性だとしたら妬けちゃいますね」
「もう、やだな。なに言ってるのよ」
「堀田さん、頬が赤くなってますますかわいいです」
「あ、ありがとうね。あまりかわいいとか言われたことないから困っちゃうよ」
恥ずかしくなった私は顔が熱くなったので、手でパタパタと仰いでいたら、なぜか林さんは口元を隠し黙ってしまった。
「えっ? ちょっと、どうしたの?」
慌てる私に林さんは無言で手を振っている。
「なに? なにかあった?」
私が「えっと……」と気を揉んでいると橘さんが登場する。
「おーい。そこの2人、俺をのけ者にするな」
橘さんの一言のおかげで仕事の話に変わっていったので、とりあえずホッとした。
林さんは醉うと褒め上手になるみたいだけど、恥ずかしくなるのでやめてほしいと思った。