この恋を実らせるために

決意を固めたところで、思わぬ伏兵が現れた。

「林くん。ねぇ、今日飲みに行くって聞こえたんだけど、私も行ってもいい?」

横から入ってきたのは広報部の木藤良美さんだ。

彼女は俺に何度も告白をしてきた面倒くさい女。

何度断っても「OKしてくれるまで何度でもアタックします」と言う。断られても寄ってくる神経が俺にはわからなかった。

亮平以外は俺と木藤さんのことを知らない。飲みに行ったら木藤さんは俺にまとわりついてくるだろう。

せっかく知春に気持ちを伝えようと決心したのに、木藤さんに邪魔されてしまではかなわない。

俺も10年間知春一筋だったから、簡単に諦められない想いがあることはわかっている。だが、相手に迷惑がられているんだ。さすがに諦めてほしい。

待ち合わせ場所に行くと木藤さんだけがそこにいて、亮平たちが来るまで隠れていようかと思ったのに、先に見つけられてしまい捕まった。

お店に入っても木藤さんが離してくれず、知春の横は林くんに取られてしまった。

斜めの位置から亮平が「バーカ」と口を開いたのが見えた。そんなことを言うくらいなら協力してくれればいいのに……そう思った。

今日はお酒はほどほどにして、知春にきちんと気持ちを伝えるはずだったのに、退屈な木藤さんの話をまともに聞きたくなくて酒が進んだ。

隣に座る女の声にイライラしているのに、知春と林くんの楽しそうな様子に嫉妬でおかしくなりそうだ。

思わずため息が漏れる。本当に邪魔な二人だ。

そろそろここでの会も終わるだろうと時間を気にしていた頃、木藤さんがここぞとばかりにしつこく話しかけてきて疲れていた。

向かいで仲良さそうにしている知春と林くんを見たくなくて、目を瞑っていた。

すると、足をガツンと蹴られた。誰だよと脛をさすろうとすると、知春と林くんがいないことにハッとする。

二人で抜けた? そんなことになっているとはと慌てて部屋を出る。

俺の足を蹴ってきたのは亮平なので、きっと木藤さんを引き止めてくれるはずと思いさっと席を離れた。

個室を出てトイレに向かう通路の先に二人の姿が見えたので歩いていく。

まずい、林くんが知春に接近してる。急いで行かなければ。
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