この恋を実らせるために
決意の夜と共鳴の朝
今日の飲み会もそろそろ終わりかなと思った頃に「ちょっと失礼します」とトイレに行くために席を立つ。
鏡を覗くと疲れた顔が見えた。
三枝さん、木藤さんとばかり話しててぜんぜん話せなかったな。きっと三枝さんは木藤さんのことが好きなのね。
少し前から感じていたモヤモヤは三枝さんが他の女の子と話しているからなんだ。
家まで送ってもらった夜、もしかしたら、三枝さんが私のこと好きなのかも、なんて自惚れたりしてバカみたい。
新しい恋を自覚した途端に失恋なんて、自分は恋愛には向いていないのかもしれない。
すぐにみんなのいる部屋に戻りたくなくてゆっくりしてしまったけど、そろそろ戻らないと橘さんあたりに心配されるわね。「戻るか」と呟きトイレから出た所で名前を呼ばれた。
「堀田さん」
「あ、林さんもおトイレですか?」
「まぁ……」
「じゃあ、私、先に戻ってますね」
横を抜けようとすると伸びてきた手に腕を掴まれ、肩に林さんの頭が載せられた。
「えっ!? 林さん、どうしたの? もしかして、具合い悪くなっちゃったの?」
「違います。僕、酒には強いって言いましたよね。僕……堀田さんのこと、ほっとけなくて。いや、僕のことちゃんと見て欲しくて」
「林さん、あの、何を言っているのかよくわからないんだけど」
「堀田さん、僕……」
肩口でモゴモゴと喋る林さんの言葉がはっきりとは聞き取れなかった。
「あ、あの。林さん、私、席に戻りたいから手を離してほしいんだけど……」
「嫌だって言ったら?」
どうしたらいいのかわからなくて頭が真っ白になった。その時、背後から声がかかる。