この恋を実らせるために
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知春が林くんと一緒にいるところを見た時は血の気が引いた。
俺以外の男が知春に触れるなんて許せない。
気がついた時には知春を俺の背に隠し、林くんに対峙していた。
なりふりなんて構っていられるか、と思った俺は亮平に「後を頼む」とだけ伝え、すり寄ってきた木藤さんをも振り切った。
素直に玄関で待っていた知春の手を掴み店を出た。
どこか静かな場所で2人だけで話をしたい。そう考えて向かった場所は亮平たちと行ったあのバー。
あのホテルは俺の実家でよく利用しているため、当日でも都合してもらえるからだ。
本当は部屋を取ってゆっくり話したいところだが、さすがにいきなり部屋に連れて行ったら引かれるよな、と考えバーの個室にした。
2人でいるには広すぎるが、窓の外は綺麗な夜景が見える。軽く飲み直して一度気持ちを落ち着けるにはちょうどいいだろう、と考えた。
夜景を眺めている知春の横顔が美しい。
知春から拒絶されないだろうと予想はしているが緊張で喉が渇く。俺は薄めにしてもらったウイスキーを飲み、深呼吸をしてから口を開く。
「堀田知春さん」
焦るな、落ち着け、と自分に言い聞かせる。
「好きです。ずっと前からあなたのことが好きです。俺と結婚してください」
頼むから俺のこの気持ちを受け止めてくれ。そう願った。
知春にとっては急な話だろう。戸惑う気持ちもわかる。わかるけど、もう止められなかった。