この恋を実らせるために
「そう。知春のご両親に挨拶を終えたら、すぐにでも引っ越しておいで」
「あの、こんな豪華なマンションだなんて聞いてませんよ」
「そういえば言ってなかったね。車は地下なんだ。行こう」
地下に連れて行かれて乗せられた車は高級なドイツ車。達也さんって何者なの?
勢いで結婚すると決めてしまったけど、私大丈夫なんだろうか……。
ご両親に会うという緊張だけではない。私、ちゃんとできるんだろうか。
不安に駆られ黙り込んだ私とは逆に達也さんはいつもと変わらない。
「電車だと乗り換えたり面倒なんだけど、車だとすぐだよ」
「達也さん……。あのマンションって達也さんのものなんですか?」
「あぁ、ちょっと実家の関係で安く購入できたんだよね」
「あの……達也さんの実家って?」
「もうそろそろ着くよ」
答えをもらう前に着いちゃうって、どれだけ近いのよ。もう私の緊張はマックスなのに。
達也さんはリモコンで門を開けて車を進める。車はガレージに停められ、達也さんがドアを開けてくれた。
目の前には私の想像を遥かに超えた豪邸が見えた。
「た、達也さん。私、無理かもです……」
「何が無理? 大丈夫だよ。俺の家族は知春を歓迎してる。誰も反対なんてしないよ」
「いや、だって、こんなに大きな家に住んでるなんて、絶対に普通の家庭じゃないですよね?」
「あぁ、会社を経営してるから他の家より少し裕福に暮らしてるかもしれないけど普通の家族だよ。ほら、待ってるから行くよ」