この恋を実らせるために
しばらく彼女の消えていった方向を眺めていた俺だが、頬に痛みを感じ彼女の行為を素直に受け取った。
捨てていいなんて言っていたけど、捨てられるわけがない。
女性からアクセサリーのように扱われていた俺は下心なしに親切にしてくれた女の子に一瞬で恋に落ちた。
家に帰って洗濯をした『ちはる』のタオルはお礼にと買ったもう一枚のタオルと一緒にいつもカバンに入れて持ち歩いていた。いつどこで再会できるかもわからないのに、もう一度会いたいという気持ちが常にあった。だが、会えないまま俺は大学を卒業してしまった。
俺が初恋を知ってからもうすぐ6年という頃に運命は俺に新たな試練を与えた。
あの時の『ちはる』に再会したのは入社式を終えてひと月くらい経ったころ、同期の亮平が『今年の新人だ』と連れてきた時だった。
『ちはる』は大人の女性になっていたがあの時の面影が残っていたので俺にはすぐにわかった。しかし『ちはる』は俺を覚えている様子はない。
いきなり気持ちを伝えたって変なヤツだと思われるだけだ。少し様子を見て、自然と挨拶ができる関係になるのが先だろう。
俺はちはるを遠くから見守るという選択をした。
まあ、亮平には俺の長年の想い人が堀田さんであることはすぐにばれた。だから、話があると亮平に呼び出されたときはきっと余計なお節介をしてくれたんだろうなと思った。ところが、亮平の切り出しは意外な始まりだった。