愛しているのは私だけ⋯⋯
彼は、手帳のメモに、サッと何か走り書きすると、それを渡してくれた。

「これ、僕の電話番号。いつでも連絡くれていいんだからね」

私は宙に舞い上がるような思いで、

「あ、ありがとうございます!私も渡すので、ちょっと待ってください!」

笑顔でメモを受け取ってくれた上杉さん。

「ありがとう。じゃあ⋯⋯そろそろ戻らないとまずいから、またね」

後ろ向きに小さく手を振る姿を見送りながら、まさかの展開に、飛び跳ねたい想いを必死でこらえた。


それまでずっと、他人行儀にしていた私だが、交際開始してからは、上杉さんに甘えてばかり⋯⋯更に言えば、ワガママにもなった。

この人は、私の恋人なんだからねっ!と、口には出さなかったものの、上杉さんに憧れている職場の女性たちに、変な優越すら感じていたのも事実。
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