幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
4親衛隊と恋



 
 美術室。
 窓際に白いカーテンがそよいでいる。
 制服姿の女子ばかり、10人ほど。
 集まっている様子は、どうやら何かの会合らしい。
 教卓で黃崎うららが指を組んで座っている。
 うららは黒板に書いた文字を見ながら口を開いた。

 
「今回の議題は、我らが黒白王子の恋人について。」


 とたんにうちわやブロマイドを持っていた女の子達からため息や不満の声が漏れる。


「考えたくない、姫の事。公然の秘密でしょ。」

「ずるいよね、いつもいつも一人だけ。絶対ずるい。」

「三角関係だから白王子の恋人ではないけど、黒王子は公言してるし。黒王子派は嫌だろうな。」

「しょうがないよ、黒白王子も人間だもん。あーあ、できればファンの誰かと付き合ってくれれば良かった。」

「静かに」


 うららが号令をかけて、教室がまた静かになる。


「静かにって、隊長は何とも思わないんですか?」


 そう聞かれて、うららは顔をあげた。

 
「姫の事。絶対ずるいですよ。」

 
 うららの顔には強い意志が見て取れた。

 
「私個人は、姫と呼ばれる新田恋の事を決して認めません。」


 うららがきっぱり言った。


「黒王子と白王子を三角関係でうやむやにして、ずるばっかり。少なくとも一途でなければ公式にはならないと思ってます。私は断じて許しません。」 


 それから、


「新田恋は調子に乗っています。このあたりで親衛隊が出ていくべきではないでしょうか。」


 と逆に聞いた。


「出ていくって?」

「今それについて考え中。ねえ、みんなも考えてよ。」


 急に敬語を辞めたうららは、机の上に沢山重なった美風のブロマイドを眺めがら、黒白王子の親衛隊達にそう声を掛けた。





 
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