幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
中から出てきた恋を、宗介は恋が出てき様に抱きしめた。
「新田さん大丈夫だった?。怖くなかった?。何にもされなかった?」
「されなかったけど……」
恋が説明すると宗介が忌々しげにため息をついた。
「ファンって言ってる奴らは頭がおかしいんだ。恋にこんな事をするなんて。畜生。もう二度と撮影会にも握手会にも行かないから。」
「僕もそうする。いくら女の子だからって、やりたい放題しすぎだ。新田さんをこんな目に合わせて。」
「黃崎って樋山のファンだろ。そいつが主導してるに違いないんだ。何とかならないのかよ。」
「僕には何も言ってきてない。ぶりっ子なんだ。腹立つ。今度会ったらあんたなんか大嫌いだって言ってやろうか。」
「あら、逆に刺激しちゃうわよ。」
美風から倉庫の鍵を受け取りながら伊鞠が言った。
「ファンの子達全員で来る可能性もあった。親衛隊だけなら僥倖よ。」
「……多勢に無勢」
「そもそも、僕たちを黒だ白だって担ぎ上げて、新聞部の先輩達のせいなんですからね。」
宗介が伊鞠を睨むと伊鞠は困り笑いして頭を掻いた。
伊鞠が言った。
「ごめんなさいね。新田さん、できるだけお守りするから、勘弁して頂戴。」
桂香がカメラをそっと撫でた。