幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
5お花見





 朝。ホームルーム前。
 恋が2−2の教室の前の廊下を通り過ぎる。
 今日の2−1の廊下にも、黒白王子の親衛隊がたむろして王子達の噂話をしている。
 恋が教室のドアを開ける。
 教室に着くと、理央がもう登校していて恋の席へやって来た。


「おはよう、恋」

「理央、おはよう」

「今日は朝から親衛隊に捕まっちゃった。クッキーと生チョコのトリュフを上野くんに渡して置いてくれだって。とってもおいしそうで甘そうだけど両方とも手作りだって。ホワイトチョコとミルクチョコの2種。2人居たんだけど、自分じゃ渡せないからなんだって。よくやるよね。」

「宗介は……」

「知ってる知ってる。上野くん受け取らないで全部新聞部に回せって言うの。前の時もそうだった。樋山くんはちゃんと受け取ってあげてるみたいだけど、上野くん潔癖だよね。勿体ない。おいしそうなのに。」


 それから、理央はいきなり話を替えた。


「この頃私お花見に行きたいんだよね。」

「お花見?」

「今桜の季節でしょ?。行かないと勿体ないないんじゃないかと思って。自然公園の桜、今が見頃だよ。みんなで行きたくない?。お花見。」

「どうだろ……」

「新田さん、駒井」

 教室の戸を開けて、可愛くラッピングされた小袋を片手に持った美風が入って来た。


「あ、樋山くん」

「それって」

「ああこれ?。親衛隊の人から貰ったんだ。お菓子作ったから食べてくださいって。かなり甘そうだけどね。僕は食べないけど、親が多分喜んで食べるから。」

「上野くんも樋山くんも大人気だね。」

「凄いね。みんな作ってくるんだ。」

「1日1個は必ず貰ってる。昨日は4つ貰った。よくやるよね。一応僕は食べないって言ってあるんだけど、お家の人と食べてくださいって渡されるんだ。」

「へえ」

「恋!」


 後ろから宗介が来て会話に加わった。

 宗介は、理央が渡そうと出した可愛くラッピングされた袋2つを一瞥しただけで受け取らなかった。


「全部新聞部の先輩達にあげて。」

「勿体ないよ、宗介。」

「毒でも盛られてるんじゃないかって気になる。僕のファンって言ってくる奴らが作ったものなんて、僕は食べる気にならない。怪しすぎるからね。」

「変な言い方するな。不気味に見えるだろ。親にあげたくなくなる。」


 美風が嫌な顔をして言った。


「当然。第一親衛隊とか名乗る程度の馬鹿が作るお菓子なんて。嫌だ嫌だ。馬鹿が移りそう。」

「なんでみんな手作りなんだろうね。」

「知らない。恋にあげるよりましだろ。新聞部の先輩達、休み時間に食ってるよ。喜んで全部食ってる。そういうもの。」

「あ、ねえねえお菓子はどうでも上野くん達が好きにすれば良いけど、私はお花見に行きたいんだけど。できれば今日。」

「お花見?」

 
 宗介は首を傾げて、美風は理央を見やった。




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