幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
コンビニのおにぎりの袋を開けながら、伊鞠が口を開いた。
「ところで。黒王子に白王子、新学期になったけど、何か変わった事はあって?」
美風が応える。
「変わった事……特には。」
「親衛隊って言ってくる奴らがヒートアップしてきてる。高等部から新聞を作りに来る先輩達のせいなんですからね。」
宗介が文句を言った。
「3年生になると、黒白王子は憧れの先輩ポジションになって映えるのよ。新入生の中にももちろん新しい王子はいるけど、私達は三角関係の報道で有名になったから、その路線を保持するの。記事も大分溜まってるわ。」
「迷惑。言っとくけど、後輩達を煽るのはよしてくださいよ。僕年下苦手。迷惑。近づいて欲しくないんだから。」
「白王子って言ってくる人達はどちらかといえば年上が多かったから、僕は助かるな。白王子派って年下少ないんだ。なんでかは知らないけど。」
「あ、知ってる知ってる。黒王子派ってクールで冷たい先輩専門の後輩が多いの。3年になって、これからまた増えるだろうね。」
理央が言った。
「うんざり。僕年下本当に苦手。チビ達とはいえ女子。鬱陶しくて嫌になる。どうにかしてくれよ。」
「時に、姫と律くんに質問よ。新田さん、律くん、新学期の抱負ある?」
「私は……」
「恋、応える事ないぞ。どうせ新聞で言った事とは違う事を書かれるんだから。毎回そう。この間なんか、僕は言ってもいないのに、『姫に一生を捧げ、命を掛けて愛する』って言った事になってたんだぜ。くっさい台詞。もちろん恋に一生は貰って貰うけど、そんな風に言う訳ない。」
「あら、黒王子親衛隊への牽制に、ぴったりだと思ったんだけど、いけなかったかしら?」
「僕は新聞では毎回何か言う時いつも片膝をついてることにされてる。」
美風が複雑な顔で言った。
「新聞見て思う。それってどうかしてますよ。なんで王子ポーズ取ってることにされなきゃいけないんですか。」
「あら、かっこいいからよ。別に他意はないわ。ただのイメージ戦略よ。」
「僕は今年は隣町の駅前の食べ歩き攻略するつもりです。1年かけて、家の近くの駅前は全部制覇したんですよ。去年は一人で行ったけど、今年は恋も連れていきます。」
律が言うと理央が言った。
「全制覇すごいねえ。抱負……私は今年も人に優しくかな。」
「理央はいつも優しいじゃない。」
恋が笑うと理央が頷いた。
「加納さん、上野さんと樋山さんにも聞いた方が良いですよ。」
「上野くんも樋山くんも抱負ある?」
「言わない。どうせ言った事と違う事を書かれるんだから。」
「抱負ねえ……僕も人には優しくしたいな。ファンって言ってくる人達にも、普通の人にも。人に無害で居たい。先輩、僕今座ってて、片膝ついてないですよ。」
そう話し合っていた所で、公園の広場の入り口の方から、黄色い声の歓声があがった。