幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜





 
 「黒王子親衛隊、フォーメーションD!」

 公園の入り口の方から、見頃の桜を後ろに、リーダー格の女の子が指示を出すと、5人の女の子が一列に並んだ。


 それに呼応して、黃崎うららが、白王子親衛隊に指示を出す。

「白王子親衛隊、フォーメーションD!」

 こちらもまた5人が一列に並ぶと、それを確認してから、その右端にうららが並んだ。


「黒王子!」

「白王子!」

「黒王子!」

「白王子!」

 
 親衛隊は声を揃えて一斉にファンコールを始めた。


「今日は親衛隊は黒白王子を眺めながらお花見をします!」


 黒王子親衛隊のリーダー格のショートヘアの女の子が言った。


「花より男子ですが、桜も愛でましょう。今日もめいっぱい楽しみましょう!」

「美風様のお酌が出来たら良かったけど。」


 うららが言った。


「今日も美風様の隣に居るのは新田恋。新聞部の先輩と、黒王子とあげく年下の子まで侍らせて。腹立つ。許すまじ、新田恋!。」

「お邪魔しないんで、借景。お顔見ながらお花見させてください。」


 黒白王子の親衛隊達は少し離れた所にシートを出して宴会を始めた。


「ちっ。ストーカーかよ。」

 
 宗介が片手でおにぎりを食べながら毒づいた。



「上野さんも樋山さんも大人気なんですね。」 

「なんで僕たちの予定を知ってるんだろう。」

「ああ、それ。私が教えたんだよ。」


 理央がしれっと言った。


「お花見の時の賑やかしに。華やかな方がいいかと思って。うちわのコールが見たかったんだ。いけなかった?」

「馬鹿な。裏切り者は駒井か。」


 美風が呟いた。

 

「駒井、頼むから余計な事しないでくれる?。こっちは身内で花見を楽しんでるんだ。もちろん樋山と向井は余計だけど。」


 宗介が面倒くさそうに親衛隊を一瞥すると、親衛隊達は嬉しそうに歓声をあげた。



「きゃあ!。こっち見た!。」

「私の事見てください黒王子!。」
  
「黒王子!」

「白王子!」

「黒王子!」

「白王子!」



 うちわをパタパタさせながらまた始まったファンコールに、宗介は引きつり笑いをした。

 それから、

「場所変えようぜ。」

 と小声で言った。

「騒がれてるところで飯食えない。うえこっち見てるよ。
嫌だ嫌だ。駒井、代わりにどっか寄って行こうぜ。」

「えーどうして。せっかく賑やかなのに。桜もとっても綺麗なのに。勿体ない。」

 空になったオードブルに箸を置いて、美風がこっちを嬉しそうに眺めているファンに呆れ顔をしながら、


「上野に賛成」


 と呟いた。
 
 


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