幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
8料理教室
朝。
黒白王子のファン達は、今日は2−1の廊下でなく昇降口にたむろして居た。
昇降口の壁新聞に、新しい公式グッズの宣伝があったので、それを見に集まっていたのである。
恋と宗介と美風は、きゃあきゃあ言い合うファン達の背中を見ながら、気づかれない様にそっと階段を登って教室へ向かった。
教室の窓から見える青空は晴れ渡っている。
ところどころに白い雲が浮かんでいる。
「あ、恋」
恋が教室に入ると、先に着いていた理央が声を掛けた。
「あ、理央」
「黒白王子の公式グッズ、予約始まってるよ。上野くんの顔と樋山くんの顔をプリントしたクッションが出たって、ファン達が騒いでる。」
「迷惑。いい加減。何がどうなったら僕の顔がクッションになるんんだ」
宗介がうんざりした顔で言った。
「僕の顔が椅子の背中に敷かれたり、座られたりするんだぜ。やってられっか。新聞部に取り下げ申請しよう。」
「みんなクッションにチューするって言ってる。枕元に飾るんだよ。そんな使い方されないよ。」
「僕の顔にそういう風にキスしてる人が居るって事に、僕はまだ馴染めない。グッズって、どこに発注してるんだろ。そろそろ調べなきゃ。親に言って止めて貰うから。」
恋は、曖昧に笑って、宗介のクッションの想像をした。
実物のクッションはまだ見たことがなかったが、伊鞠と桂香の作りそうなあざといクッションは、考えれば手に取れそうに形が想像出来た。
「そうそう、そういや恋、私、良いお料理教室を見つけたんだけど、一緒に行かない?」
理央が聞いた。
「恋は料理はからっきし。何にも作れないだろ。僕と結婚したら、それじゃ済まないからな。」
宗介が言った。
「うーん、料理は……」
「行こうよ。聞いたら初心者はお菓子作りからスタートするんだって。きっと楽しいよ。」
「僕は料理好きで得意だけど、新田さんが作る料理も食べてみたいな。興味ある。せっかくだから練習してみるといいよ。僕の花嫁になった時は、毎日僕が食事作って出す予定だから、心配はないけど。」
「樋山、恋は僕の恋人。人の彼女に勝手な事言わないで。迷惑。」
「僕の家はリッチだ。結婚は金持ちとした方が良いに決まってる。言っとくけど、僕上野に新田さんは渡さないからな。大人になったら、新田さんは僕の家でゆったり快適に暮らすんだ。」
「私明日香も誘ってるんだけど、部活が忙しいからって言うんだ。明日香おっとりなのに、なんで厳しい運動部なんかに入ってるんだろうね。」
恋は、理央と行く事になりそうな料理教室を思い描いて、ほっとため息を付いた。