幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
9恋の家出







 放課後。
 黒白王子の親衛隊は、今日は廊下にたむろせずに、2−1の教室に入って来て、黒板の前に固まって騒いでいた。
 親衛隊の中の絵のうまい子の1人が、宗介と美風を黒板に描いて、似ているかどうか評し合っている。
 恋と宗介と美風と理央は、恋の席に集まって、今日の事について喋っていた。
 恋が、たまには遠出をしたい、と言うと、宗介が、そんんな時間はない、とあっさり却下した。


「僕はやらなきゃいけないこと多いから。勉強もしたいし、家事も手伝わなきゃ。遠出なんてしてる暇ない。」

「ええっ。私は良いと思うけどな、遠出。」
 
 宗介が言うと理央が言って、情景を想像する様に考える顔をした。

「見たことない景色とか、綺麗に空が見える所とか、たまにはリフレッシュに良いじゃん」

「僕もそう思う。」


 美風が言いながら腕を組んだ。


「時々は日常から離れて、気持ちを切り替えなきゃ。上野はせこいんだよ。宅習だって家事だっていつでもできるだろ。僕は賛成、新田さんに。」

「日常で弛まず努力を続けるから、今日の僕があるんだ。ちょっとでもペースが崩れたら今の僕はない。」

 
 宗介が声音を変えた。


「といっても僕は遠出自体に反対してる訳じゃない。僕だって、時々は気持ちの切り替えをした方が良いと思ってる。問題は恋、お前の生活態度。お前は毎日怠けてるんだからリフレッシュもなにもないだろ。」

「今度みんなで行かない?。遠乗りとか。」

「良いね。自転車で遠くまで行くの、楽しそう。」

「恋が少し勉強でもする様になったら考えるよ。恋、お前は勉強しなさすぎなの。家の事もなんにもやらないし。」


 座っている恋からは黒白王子の親衛隊達が無聊に振ったうちわが見える。
 
 恋は、宗介のお説教を聞きながら、考える、と呟いた。




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