幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
ある日、恋は、親の出かけてしまった家で1人手持ち無沙汰に居た。
宗介が留守で、隣の家へ行くわけにも行かなかったので、恋はリビングでぼんやりしていた。
部屋を眺めていると、ダイニングテーブルの椅子の上に、ペット用のボールが置かれている。
このボールは硬い野球ボールの様なボールで、狐の恋も母親も普段は滅多に使わなかった。
恋は、酔狂に、ボールを手に取って、片手で軽く放り投げてキャッチした。
恋は、ボールを持ったまま、家族が居ないのをもう一度確認しに、部屋から部屋へと移動した。
和室に入った時、恋は、何気なく床の間の壺を見た。
ここにボールが当たったら事だよな、と思いながら、恋は、またリビングでやった片手キャッチの動作を繰り返そうとした。
最初から結果は分かっていたはずだった。
恋は、ボール取り落として、ボールは代わりに跳ねて薄物の壺直撃した。
かちゃん、とガラスの壊れる音がした。
恋は焦って、割れたガラス同士を急いで拾って付け合わせようとしたがもちろんくっつくはずもなく。
恋は、顔面蒼白で、両親がこの壺を大事にしていたことを思った。