幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
連絡が入って、全員が宗介の家の庭に戻ってきた。
恋が美風に連れられて庭へ入って行くと、宗介が出てきて、さっそくゴチン、と恋の頭にげんこを落とした。
「いたっ」
「ばかたれ。何が探さないでくださいだ。こっちがどれだけ心配すると思って。」
「僕もそう思う。新田さん、反省。」
美風に言われて恋は顔を上げた。
「だって」
「大体、壺割って怒られるのが何?。この意気地なし。ああいう置き手紙の家出は、意気地なしがするんだよ。よく覚えときな。」
「親衛隊まで捜索に加わって貰って、大騒ぎだったんだからね。居なくなった新田さんを探して。まったくもう。」
「見つかってよかったわ」
伊鞠が言うと、宗介がその通り、と言った。
「新田恋、もう美風様に迷惑かけちゃ駄目だからね。私だって一緒に探し回ったんだから!。」
商店街から戻ってきたうららが言った。
庭の前の部屋の明かりを全部付けて、辺りは明るくなった。
親衛隊達は、うちわをパタパタさせながら、恋に文句を言った。
「姫の存在、タダでさえ悔しいのに、家出捜索まで手伝わされるこっちの身にもなって。」
「ねえ。黒白王子はこっちを少しも見てくれないし。酷いよ。」
「あちこち歩き回るのほんと疲れた。ほんとに姫勘弁してよ。」
「いい加減懲りたらどう?。どうせ明日この事は記事になる。僕と樋山に怒られる姿が先輩達に撮られてた。恥ずかしいと思うんだね。」
宗介が言った。
理央が言った。
「あ、上野くん、篠田さんが上野くん家の写真撮ってるけど。記念にって。言うけど撮りすぎてる。」
「は?」
「今がチャンスなんで。黒王子、お構いなく!」
慌てた顔をした宗介とまだブツブツ言っている美風に、恋はごめんごめんと謝りながら、みんなで珍しく賑やかな夜を過ごしたのだった。