幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
10天体観測
朝。
廊下を抜けて、恋がドアを開けて教室に入った。
教室の窓際には、宗介と美風。
二人は珍しく何やら話をしていたらしかった。
宗介は、恋を見つけると片手をあげた。
と、前から理央が来て恋の手を掴んだ。
「恋!」
「あ、理央」
「昨日黒白王子の親衛隊から連絡が来て、姫の恋から黒白王子の秘密を聞き出せたらなって思ってる子が居るんだって。」
理央は楽しそうに言った。
「それでね、どうせなら、姫も黒白王子の親衛隊に入隊しませんかって、誘っておいてだって!」
「入隊はちょっと。」
「なんで?。良いじゃん良いじゃん。面白そうじゃん。私ユーレイ隊員だけど、一応ファンクラブ入ってるし。この機会に恋も入るといいよ。せっかくだから。敵地潜入!。楽しそうじゃん。」
「恋!」
宗介と美風が窓際から歩いて恋達の方へやって来た。
宗介が口を開いた。
「さて質問です。昨日お前は、何のケーキをどこで食べたでしょう?」
恋はぎくっとして引きつり笑いをした。
昨日恋は、美風の家へ行って、おいしい生クリームのフルーツケーキを食べてきたのだった。
「え、もしかして、恋、樋山くんち行っちゃったの?」
いつでも感のいい理央が気づいて笑った。
「これはスクープだね。新聞部の先輩達に教えなきゃ。上野くんもそんなしかめっ面しないで。気楽に居ようよ。」
「樋山くん」
恋が恨みがましく言った。
美風は恋を強引に誘って自宅へ連れて行ったが、その事はあくまで宗介には内緒だと恋は思っていた。
「新田さんは、確かに僕の家で、僕と一緒にフルーツケーキを食べたよ。正真正銘の本当。」
美風は宗介に言った。
「イコールもう上野は邪魔な存在でしかないんだ。新田さん、僕んち御用達の専門店のケーキ、おいしかったでしょ?」
「……」
「樋山がさっき僕に当てこすってきたんだ。ったく。この裏切り者。僕に黙って樋山の家に行って良い訳ないだろ。」
「上野くんはその間何をしてたの?」
「別に。宅習して家の掃除してた。考えると馬鹿らしくなってくる。恋、分かってるんだろうな?」
恋は頭を掻きながら、小声でごめんと言った。
宗介は浮気には厳しかった。
浮気すると宗介は一発ビンタかげんこを必ず加えたし、お説教も長かった。
今日は打たれなかったな一安心と恋が思っていると、宗介はふいに両手を伸ばして、恋の頬を摘んだ。
そのまま宗介が横に手をぐいっと引くと、引っ張られた恋の頬にはきりきりと痛みが来た。
「20秒」
宗介が笑顔で宣言した。
「上野くんそれ痛いって」
「離せよ。何してんだよ、新田さんに。」
美風が言うと恋の肩を寄せた。
「上野くん、裂ける、恋の顔が」
理央が半笑いで言うと美風が平坦な調子で言った。
「駒井、裂けるとか言わないで。平気。僕達女の子に本気はありえない」
「はい20秒」
宗介はやっと手を離すと腕組みをして恋を睨んだ。
「二人きりで遊ぶのは浮気?浮気じゃない?」
「……」
「頬抓られて当然。反省しないなら今度はげんこ。まったく。」
笑っている理央に隠れて、恋は小声でまたごめんを言った。