副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「こんばんは、ハートフル急便です」

 インターホンを押し、カメラに向かってお辞儀をする。
 すぐに扉の向こうが騒がしくなって、扉が開いた。

「こんばんは」
「こんばんは。本日もハートフル急便をご利用いただき、ありがとうございます。今日も私、桃井が担当いたしますね」

 一応の挨拶を済ませ、彼の部屋に上がる。
 彼は二日前と同じくスーツ姿で、ネクタイは外されていた。それだけで、どこかくラフな印象を感じる。

 前回と同じように彼からソファーに座るよう勧められ、私は端っこに座った。

「このたびは、定期サービスをお申し込みいただきありがとうございます」

 彼に向き直り、深々と頭を下げる。だけど、彼は苦い顔で私を見た。

「まったく嬉しそうな顔じゃないな」
「……当たり前でしょう。元カノを家政婦として雇う人なんて、世界中をくまなく探してもいないですよ」
「残念ながら、ここにいるな」

 くつくつと笑う彼に、今度は私が苦い顔をしながら鞄からタブレットを取り出す。
 正式な契約にあたり、一通り定期サービスの内容について説明する義務がある。
 私はタブレットを起動させると、注意事項がまとめられているページを読み上げた。
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