副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「ここに、終了のサインをお願いします!」
「あ、あぁ……」

 サインを書き終えた彼の手元から半ば強引にタブレットを奪って、自分のサインも入れる。

(ヤバイ、この前よりも遅くなっちゃう……!)

 浴室に時計がないから、時間が過ぎていたことに気付かなかった。
 きっと、託児所からも連絡が来ていることだろう。

 慌てて鞄にタブレットを入れて玄関に向かったら、足がもつれた。

「うわぁ!」
「おっと」

 後ろからギュッと抱きとめられて、ひっ、と小さく息を呑む。
 すぐに離れようとしたけれど、彼の腕が私のお腹に回ったままだった。

「遅くなったし、送っていく」
「ちょ、慎也さん……! 大丈夫なので!」
「心配なんだよ」

 そんな、懇願するような声で囁くのはずるい。
 一瞬だけ、ぐらりと気持ちが傾いてしまいそうになる。

 だけど私はくるりと彼の方に向き直ると、そっと腕を外した。
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