副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「さっきため息ついちゃったのは、本業のことで考え事してただけ! 生活も苦しくないし、ただちょっともう少しお金に余裕がほしいなと思って、いま頑張ってるだけだよ」
「本当に?」
「本当に。だから、ちゃんと依頼されたことはしっかりやり切るから」

 それからは無心で料理を口に運び、食べ終わった皿からシンクへ持っていって洗っていく。

 今日は勝手がわかっている分、昨日よりも早くシンクの掃除が終わったため、風呂洗いも担うことにした。

「なんか、風呂掃除までさせるのは気が引けるな……」
「自分でオーダーしたんじゃない」
「それはまぁ、そうだが……」

 いまさら何を恥ずかしがっているのか、躊躇う彼を浴室の外に出し、その場にあった洗剤とスポンジで浴槽を磨いていく。

 自ら言い出したくせに渋る彼ではあったものの、浴室は言うほど汚れていなかった。
 毎日、それなりに掃除はしているのだろう。それこそ、自分の家の風呂を洗うときと変わらない労力で終わってしまう。

 そうしてすべてを終えた頃には既に十時半を回っており、私は慌てて彼にタブレットを突き出した。
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