副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
◇
「こんにちはー!」
「つ、紬ちゃん……?」
彼の家に着くなり、紬が私の腕からぴょんと飛び降りて広い玄関に着地する。
ドアを開けた彼も、まさか紬が来たとは思わず、目を丸くして驚いた。だけど、すぐに嬉しそうに目を細められる。
彼はいらっしゃいと紬の頭を撫でると、紬を部屋の奥へと連れて行ってしまった。
いつものピシッとした姿からは想像できないほど、紬に対して甘い彼につい笑みが零れてしまう。
本当はこんなふうに甘えてはいけないとわかってはいても、紬と彼が本物の親子のように仲睦まじくしている姿を見るのは嬉しかった。
(……まぁ実際、本物の親子だしね)
何か通じるものがあるのか、紬は彼を嫌がらない。
元々、人見知りをするような子ではないけれど、彼に対しては心を開くスピードが早かった。私の方がその早さに戸惑っているぐらいだ。
私も部屋の奥へ向かうと、早速ソファーの上でぬいぐるみを出して遊んでいる紬に呼ばれた。
「ママ、早く!」
「はいはい」
「波留、おいで」
二人からそんなふうに呼ばれて、胸の奥がじんわりと温かくなる。
愛おしさすらこみ上げてきて、自然と輪の中に入っている自分がいた。