副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「ようやく、波留と一緒になれて嬉しい」
「……私も、嬉しい」

 熱っぽい目で見つめられて、自然と顔が近付く。
 だけど、廊下の奥からトタトタと走ってくる音がして、私はぱっと顔をそらした。

「ママー! パパー! こっち!」
「はいはい」

 紬に部屋まで来るように言われて、彼に背を向ける。だけど一瞬で抱き寄せられて、唇にキスを落とされた。

「ちょっ、慎也さん……!」
「もう、ママはつむぎの!」
「パパのものでもある」

 子ども相手に張り合う彼がおかしい。
 彼は紬を抱き上げると、紬も大好きだと言って頭を撫でた。

「今日は何して遊ぶ?」
「きょうは、おえかきしたい」
「わかった」
「ママも、おえかき!」
「はーい」

 紬に引っ張られて、年甲斐もなく三人で飽きるまで絵を描く。
 これからもそんな幸せな日々が続けばいいと、願うばかりだ。

 そうして新たな生活をスタートさせた私たちは、後日、正式に彼が経営する店に招待された。

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