代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~

八尋からのお願い

「素敵なお庭ですね」

 お見合い会場になっていたティールームを出て、二人はホテルの庭へ出た。

 美しく手入れを施された庭を、七海は褒める。

 庭は洋風である。

 きっちりと刈り込まれた樹木が整然と並び、花壇には色とりどりの花が咲いていた。

「ええ。何度か訪れたことがあるのですが、季節ごとに違う花が楽しめて、気に入りなんです」

 隣を歩く八尋が、穏やかにそう説明した。

 八尋はどうやら、七海の歩幅に合わせてくれているらしい。

 七海は今日、振袖に合わせた草履なので歩みが遅いのに、置いていかれることがないから、きっとそうなのだろう。

(優しい方みたい)

 部屋で話していたときも喋り方などからそう感じたが、八尋に対する好印象はさらに強くなった。

 七海は嬉しくなる。

 今日だけの付き合いとはいえ、こういう気遣いをしてくれる人と過ごせるのは、安心できることだ。

「白や赤の春バラが綺麗ですね。一華さんは華道のアシスタントとうかがいましたが、こういうお花も扱われるんでしょうか?」

 一華の仕事の話が来たが、ここはやはり従姉妹である。

 仕事のことも、なんとなく把握しているのだ。

「いえ、教室で扱うのは、日本に古来からあるお花がほとんどなんです。つい先日までは、桃や桜をよく扱っておりました」

 落ち着いて答えることができた。

 八尋もなにも疑わなかったようだ。

「なるほど。バラは海外由来ですからね」
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