代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 高鳴る心臓を抱えつつ、七海はそっと手を出した。

 八尋の手に重ねる。

 触れた手はしっかりと分厚くて、大きく、大人の男性なのを肌で感じられた。

 それにあたたかい。

 優しいぬくもりが、七海の手をそっと包む。

 七海のドキドキする気持ちは、もっと高まった。

「さぁ、参りましょう。開場まであと三十分ほどあります。あちらのソファで待つのはいかがですか?」

 七海の手を取った八尋は、逆の手でロビーを指差した。

 そこには来客が待てるように、ソファや肘掛け椅子が並んでいる。

 立ち待ちもくたびれるので、七海はお言葉に甘えることにした。

 ソファで座り、八尋と軽い会話をするうちに、緊張や高揚は少しずつ落ち着いてくる。

(これならエスコートも緊張しすぎずに済みそう)

 会場へ向かう前、手洗いで軽く身支度を直す七海は、そう思って安堵を覚えた。
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