代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
「大丈夫ですか? こちらを……」

 隣にいた八尋が、すぐにハンカチを差し出してくれた。

 ワイドタイプらしい青いハンカチは、丁寧に畳んである。

「ありがとうございます」

 少し気が引けつつも、七海は素直に受け取った。

 濡れた部分を軽く押さえる。

「本当にすみません……」

 彼女は眉を下げてまだ謝るので、七海はフォローするようにまた笑った。

「手を洗えばいいだけですよ。お気になさらず」

 濡れた手も軽く拭けた七海は、八尋のほうを見上げる。

「すみません、八尋さん。ハンカチ、洗ってお返しします」

 そう言ったが、八尋はかえって慌てた。

「いえ、いいですよ。俺が渡したんですから。それより早く手を洗ったほうが良いです」

 それで優しいことを言ってくれるから、七海はあたたかな気持ちを覚えた。

「そうですか……? なんだかすみません。では、行ってきますね」

 お言葉に甘えることにした七海の反応に、状況を心配していた八尋の表情も少し緩んだ。安心した顔になる。

「はい。では、ここで待っています」

 七海はそう言った彼に軽い笑みを向け、ぶつかってしまった彼女に対しても会釈をした。

 そしてハンドバッグを持ち直して、ホールの出口へと向かう。
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