代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 大平家は、ほんの二世代ほど前まで、華族という身分を持っていた。

 当時は大きな建築会社を経営しており、非常に羽振(はぶ)りの良い家柄だった。

 だがもちろん、現代では華族制度はとっくに解体されている。

 今の大平家は、なんの身分もないのだ。

 それでも今もその名残はある。

 当時の建築会社は一旦、体制立て直しを余儀なくされたものの、今でも存続している。

 明治時代の規模に比べたら大変縮小されてしまったが、それでも安定した企業として機能しているのである。

 つまり時代が時代なら、一華は大平家のお嬢様で、七海はその分家のお嬢様ということになるのだ。

 そんな家柄だから、見合い話が稀に来るのである。

 実際、一華の姉の令華(れいか)の結婚も、その形だった。

 そして次女の一華は現在、二十六歳。

 年頃としては、そろそろ本腰を入れて結婚を考えたい頃だ。

 今回のお見合い話も、最初は「せっかくだし、行ってみようかな」くらいには乗り気だったのだが、それが別の用事とダブルブッキングになってしまった。

 お見合いの当日に、どうしても行けなくなった……という事情だ。
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