代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~

代理役の真実

「……というわけで、俺は兄の代理で見合いに出席していたんです」

 会場を出た二人は、同じ階にあるテラスに落ち着いた。

 そこで非常に申し訳なさそうな様子の彼から、事情を打ち明けられた。

 バルコニーの柵の前に立った七海は、目を真ん丸にしてしまう。

 頭上の晴天も、一階にある美しい庭も、爽快に思う余裕など、一ミリもなかった。

 ここまで八尋と名乗っていた彼の本当の名前は、『西条 玖苑』。

『西条 八尋』の一歳下の弟だそうだ。

 そして本当の『西条 八尋』は、本名を伏せて、芸能活動をしていた『HERO』。

 西条家の親は、大企業の社長令息の身分でありながら、会社に所属せずに芸能活動をしている八尋のことを良く思っていなかった。

 よってお見合いでもさせて、西条家の長男としての自覚を持たせようとした。

 だが八尋はそれに反発して、当日に仕事を入れてしまった。

 もう大平家に打診をしていたために、困り切った親が、弟の玖苑に、その場を乗り切るための代役をさせることになった……。

 そんな経緯を急に知ってしまって、七海が混乱しても仕方がない。

「本当はプロモーション映像の前に打ち明けるつもりだったんですが……、いや、言い訳ですよね」

 玖苑は自嘲するように、少し視線を逸らして言った。
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